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 立冬を過ぎ、庭先菜園の大根葉が勢いづいている。青菜を摘んで、塩漬けした。炊きたての新米にのせて食べれば何よりのごちそうだ。

 兼好法師は盛りの花、陰りの無い月、それだけが見るべきものか-と問いかけた。よろずのことは初め、終わりこそが趣深いと。日本人が「はしり」「盛り」「名残」と順に楽しむのも、そんな伝統の季節感が根底にある。

 気象庁が1953年に始めた「生物季節観測」は動植物のはしりを確かめるようなものだろう。気象台や測候所の職員が持ち場の周辺で花が初めて開花した日、鳥が初めて鳴いた日などを記録し、気候の変動を把握してきた。

 その対象が来年1月から、全国で一気に縮小されそうだ。統一規定種と選択種合わせて30種以上あった植物は、桜や梅の代表的な6種のみを残す。動物23種はウグイス、アブラゼミの初鳴きなど全てを廃止する。都市化で観測が難しくなったのが理由らしい。

 これまでも見直しはあり、鹿児島地方気象台は約10年前、東京と同時期にトノサマガエルの初見の観測をやめた。以来、植物13種と動物10種で続けてきたが、こちらも気象庁の方針に沿って絞り込むという。

 あすは七十二候の「金盞香(きんせんこうばし)」。水仙が芳しい香りを放ち始める頃とされるが、水仙も観測種目から外される。都市化で動植物から季節の便りが届かなくなる環境を見過ごすわけにはいかない。