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 「真剣だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳ばかり」。薩摩川内市長を先日勇退した岩切秀雄さんはそう言って市職員を叱咤(しった)激励していた。

 市内の会社で掲示されていた文言に感心し、自らも使いだしたという。職員の心にも刺さったのだろう。退任式後、岩切さんを見送る市役所前の人波にその言葉を記した横断幕があった。

 企業や役所のトップによる訓示は理念や施策を全体で共有するのが主な目的だとしても、聞いた一人一人の成長につながり、人生の指針となる場合もある。いかに気の利いた例えを織り込むかは力量の一つといえるだろう。

 川内商工会議所会頭を20年務めた同市名誉市民、田中憲夫さんは新聞や本で見つけた印象深い言葉を書き留め、自社の会議で紹介してきた。10年分をまとめて3年前に出版した「箴言録(しんげんろく)」(非売品)には550の寸言が並ぶ。

 「汗を忘れたマネーゲームは会社をつぶす」「トップセールスマンとは最も多くの屈辱を受けた男である」。ビジネスや経営の話だけにとどまらない。「不可能の反対語は可能ではない。挑戦だ」。米大リーグ初の黒人選手、ジャッキー・ロビンソンの言葉は諦めずに努力する大切さを伝える。

 努力不足のわが身にぐさりと刺さる。一方、勇気づけられる一言もある。「今日は私の人生の残りの最初の日だ」。毎朝唱えることにしようか。