( 11/20 付 )

 草木にのみ込まれそうな廃屋から煙突が突き出ている。奄美市の国立ハンセン病療養所奄美和光園の火葬場跡を収めたモノクロ写真は、亡くなっても外の世界と隔絶された過酷な歴史を伝える。

 東京都東村山市の国立ハンセン病資料館で開催中の写真展「13(サーティーン)」を訪ねた。撮影者は俳優の石井正則さん。元お笑いコンビ「アリtoキリギリス」で知る人も多かろう。タイトルの由来である全国13カ所の療養所の現在を撮影した。

 ドキュメンタリー番組でハンセン病に関心を持ち、入所者の減少などを背景に変わっていく姿を記録しようと3年かけて巡った。手間はかかるが高画質の大判カメラを使い、自身で現像し焼き付けた。

 入所するとまず入らされた消毒風呂、反抗的な人を拘束した重監房跡…。深く陰影の刻まれた一枚一枚が入所者の苦難や強制隔離政策の過ちを静かに訴える。鹿屋市の星塚敬愛園に一部が残っている逃走防止の「ヒノキの垣根」もある。

 高齢化が進む各療養所の見学や交流活動はコロナ禍で滞っている。昨年、熊本地裁は家族への損害賠償を認める初判断を示した。ようやく高まってきた差別解消の機運がしぼんでしまわないか気掛かりだ。

 写真展は予約が連日いっぱいで会期が延長された。石井さんは「療養所を訪ねるきっかけになれば」と期待する。コロナが明けたら巡回展を開けるといい。