( 11/27 付 )

 針供養など、愛用の道具に魂が宿るかのように敬意を払う習慣は日本人独特の感性だろう。難しい作業をこなす機械に、思わず「お疲れさま」と声を掛けてしまう。

 そんなねぎらいの言葉を贈りたくなる探査機「はやぶさ2」の活躍である。種子島を飛び立って6年、来週末に小惑星りゅうぐうで採取した岩石を地球へ持ち帰る。

 初代はやぶさは7年間で60億キロの道のりを旅して10年前、小惑星イトカワの微粒子を持ち帰る歴史的偉業を成し遂げた。通信途絶などを乗り越え、奇跡の帰還と言われた。大気圏で燃え尽きる最期に涙する人もいて、物語は相次いで映画化された。

 教訓を生かした2代目はほぼ順調に飛行し、ハラハラする場面は少なかった。それでも、金属弾を表面に撃ち込み、人工クレーターをつくって地下物質を採取するという高度なミッションだ。遠くの天体から試料を持ち帰る技術を日本のお家芸として確立する役目は大きい。

 燃料が余っているため、オーストラリアの砂漠へ試料カプセルを投下すると、別の小惑星に向け再び旅立つ。今度は片道切符というから、土産だけ置いてきびすを返す姿を思えば、少し寂しい気分になる。

 試料の回収に成功したら、太陽系の謎に迫る鍵になるかもしれない。新型コロナに覆われた年の瀬に差す光明にもなろう。「お帰り。そして行ってらっしゃい」と空へ声を掛けようか。