( 11/28 付 )

 <わが行けばうしろ閉ぢゆく薄原>。ススキ野原を一人歩く女性。白い穂を払い、前へ前へと。何か決意を秘めるのか。毅然(きぜん)とした姿が思い浮かぶ印象深い一句だ。

 作者の正木ゆう子さんは、今春から南日俳壇選者を務める。スタート時の寄稿文で師・福永耕二の指導に触れていた。作句法は脇に置いて「この句のどこが素晴らしいか、どんなに自分の心を動かすかを目を輝かせて語る」のが常だったという。

 旧川辺町出身の福永をしのぶ南九州市かわなべ青の俳句大会受賞作は、今年も味わい深かった。最高賞に選ばれた<一族で今年限りの稲を刈る>は、「圧倒的な強さ」で推されたと審査総評にある。

 作者は霧島中2年の浦野友杏(ゆあ)さん。両親の実家はともに兼業農家で、幼い頃から親戚総出の田植えと稲刈りを手伝った。だが、父方も母方も米作りをやめてしまった。その寂しさを詠んだ。

 これまで毎年、掛け干しの「馬」が並んでいた田に刈り取り、脱穀までしてくれる大型機械が入り、あっという間に稲穂が消える風景もあちこちで見る。人手が減り、残る人の体力が衰えてゆく里の暮らしがある。稲作文化の行く末はどうなっていくのか。

 福永の薫陶を受けた正木さんにとって、良い句とは「語りたくなる句」だという。今年の青の俳句には13万近い応募作が寄せられた。頂点の句は、語り尽くせない日本の現実を映し出す。