( 11/29 付 )

 幕末の薩摩藩英国留学生は航海の途上、外国のさまざまな文化と出合った。その一つがコーヒーである。留学生の日記にスリランカの土産物として記されているという。

 船出の地いちき串木野市羽島の薩摩藩英国留学生記念館で教わった。まだ日本人のほとんどがコーヒーを知らなかった時代、もし実際に飲んでいたら、その香りや苦みをどう感じただろうか。想像すると楽しい。スリランカは19世紀までコーヒー産地だったが、さび病がはびこり、その後紅茶が取って代わる。

 記念館ではさらに興味深い話を聞いた。いちき串木野市には県内でも早い時期に自家焙煎(ばいせん)する喫茶店ができたそうだ。かつて遠洋漁業関係者が海外からコーヒー文化を持ち帰った影響という。店内はさぞかしハイカラな雰囲気だったろう。

 鹿児島とコーヒーのつながりで極め付きは奄美での豆の生産だ。徳之島の農家は約40年間栽培に取り組み、大手メーカーとの連携で再来年に東京で試験販売が始まる。

 生産者は増えてきたものの、産地として確立するには収穫量をもっと増やす必要がある。露地栽培の北限という難しさもあり、道のりは平たんではなさそうだ。

 ただ味の評価が高いというのはうれしい。モカやブルーマウンテンと並び、奄美産が喫茶店のメニューに載るときはどんなブランド名だろうか。想像してはやる心を茶褐色の一杯で落ち着かせる。