( 12/3 付 )

 ハノイに赴任した知人が、現地のフォーの店を気に入ったそうだ。ベトナムの国民食といわれ、米粉で作った麵は日本人の口にも合う。出勤途中、1杯400円足らずのフォーをかき込むのが朝の日課になった。

 ひと月ほど過ぎた日、あるじが半額しか受け取らない。「きょうからベトナム人料金でいい」。これまで観光客向け料金を取られていたことを知って苦笑いしつつ、仲間と認められたようでうれしかったという。

 よそ者にとって、受け入れてもらえる喜びは格別だ。それは旅人も同じだろう。行った先で土地の人と打ち解けて語らう機会があれば、街の印象はぐっとよくなる。

 鹿児島でそんな場所といえば、鹿児島中央駅近くの「かごっまふるさと屋台村」が思い浮かぶ。NPO法人が運営し、現在26店舗が営業している。2012年の開村以来、県内各地の食材を使った料理を提供してきた。今月末で幕を閉じる。

 こぢんまりした店が並び、路地に客の語らいが聞こえてくる気安さが魅力だった。地元居酒屋と比べると割高との声もあったが、郷土の歴史や救命措置などの勉強会を重ね、もてなし向上に努める若手起業家を支援する場と思えば納得できた。

 観光客と焼酎談議に盛り上がった記憶のある左党も少なくあるまい。居合わせた人との垣根を越える楽しさを地元住民にも教えてくれた小さな村が無くなるのが惜しい。