( 12/8 付 )

 「早く戦争が終わって、おいしいコーヒーが入れたい。それだけが僕の望み」。先日放送が終わったNHK連続テレビ小説「エール」で喫茶店のマスターが、代用品の大豆でコーヒーを入れながらこう漏らす場面があった。

 ぜいたく品の製造や販売が法律で禁じられたのは、太平洋戦争がまだ始まっていない1940(昭和15)年だった。「ぜいたくは敵だ」というスローガンを書いた看板が街のあちこちに立てられた。

 当時の新聞は「趣味の、ぜいたくのといっておれない時勢だ」と後押しし、百貨店の食堂は、米の代わりにうどんを使ったすしや“国策ランチ”など代用メニューを競って開発した。作家半藤一利さんの「B面昭和史」に詳しい。

 79年前のきょう、旧日本軍による真珠湾攻撃で日米は開戦した。半藤さんは「教訓としなければならないのは戦争への過程、つまり前段階」と警鐘を鳴らす。

 国民が同じ方向を向くような空気が生まれれば、再び誤った道に進みかねない。新型コロナウイルス感染が拡大し、他人の行動に目を光らせる「自粛警察」という言葉が話題になった。「右へ倣え」の同調圧力がはびこる世は恐ろしい。

 手ごわいウイルスにおびえながら年の瀬を迎える。そんな時だからこそ、他者への思いやりを忘れないよう心掛けたい。一杯のコーヒーをゆっくり味わえる何げない時間の大切さを胸に刻みつつ。