( 12/12 付 )

 その花の名を知ったのはご多分に漏れず、昭和の大ヒット曲「シクラメンのかほり」がきっかけである。1975年に各賞を総なめにし、紅白歌合戦で布施明さんが熱唱していたのを思い出す。

 シクラメンは地中海原産で、日本には明治期に持ち込まれた。当初は「豚のまんじゅう」と呼ばれていた。ヨーロッパで餌にされていたからという。いくら華やかさと気品を兼ね備えた花といっても、豚のまんじゅうでは曲に歌われることはなかっただろう。

 真っ赤な花が密集して咲く姿からカガリビバナという和名もある。いつのころからか年の瀬が近づくと、鉢花が家々の玄関などを彩るようになった。鹿児島県内でも各地で生産され、出荷のピークを迎えている。

 薩摩川内市の農家では、花びらの色や形が多様な約70種類がビニールハウス内を埋め尽くしていた。各農家が共同研修などで学び、質や生産力の向上に努めてきた。最近は県外向けの出荷も多いそうだ。

 師走の花とすっかり思い込んでいたが、俳句の世界でシクラメンは意外にも春の季語という。「この時季の鉢物も、暖房の風に当てないなど気を付ければ、春まで花を咲かせ続けます」と教えられた。

 感染防止のために外出自粛が求められる折だけに、美しい花を眺めると癒やしや潤いを感じる。心のかがり火を絶やさないように、わが家の鉢花も大切に手入れしなくては。