( 12/13 付 )

 静かな展示室でシャッター音だけが響く。カメラを構えるのは、ほとんどが“刀剣女子”と呼ばれる刀剣ファンの女性たちだ。福岡市博物館にある国宝「圧切(へしきり)長谷部(はせべ)」がお目当てである。

 刀を擬人化した人気ゲーム「刀剣乱舞」をきっかけにブームが続いている。同館のもう1振りの国宝「日光一文字」も今年ゲームに登場してファンを喜ばせた。先月末まであった名刀2振りの同時公開は、聖地巡礼のにぎわいを見せていた。

 圧切長谷部は福岡藩主黒田家ゆかりの刀である。刀身に雪がふわりと舞い落ちたような独特の刃紋が美しい。元々は織田信長が愛用し、粗相をして逃げ隠れた茶坊主を棚ごと圧(お)し切ったと名の由来が伝わる。刀にまつわる歴史や背景も奥深い。

 鹿児島の薩摩刀も全国に名を知られる。現在の鹿児島市谷山地区は産地として薩摩藩地誌「三国名勝図会」に記されている。砂鉄や水を調達しやすかったため、900年の歴史を持つ刀匠・波之平(なみのひら)一派などが拠点を構えた。

 先日は江戸時代の工房跡とみられる遺構が見つかった。壁のついた炉の跡や空気を送る土製の管なども出土しており、かなり本格的だ。辺りには軽快な鎚(つち)音が響いていたことだろう。

 鹿児島市の黎明館は22日からの国宝「国宗」や重要文化財「秋広」公開に合わせ、薩摩刀も展示する。刀剣女子ならずとも一度は目にしておきたい郷土の宝である。