( 12/15 付 )

 今では名曲として知られているクラシックの作品も初演の評価はさまざまだったようだ。ストラビンスキーのバレエ音楽「春の祭典」は、聴衆のやじと床を踏み鳴らすブーイングで騒然となった。

 一方、「第九」として親しまれているベートーベンの交響曲第9番「合唱付き」は大成功を収め、聴衆の盛大な拍手と歓声に包まれた。だが、会場にいた彼はそれに気付かなかったという。持病の難聴が悪化し、既に聴力を失っていた。

 異変に気付いたのは20代半ばのころだった。30歳を過ぎたころ、2人の弟に宛てた手紙には「ほかの人以上に完璧であるはずの感覚に弱点があるなんて、どうして認められるだろうか」と苦悩をつづっている。

 今年はベートーベンが生まれて250年に当たる。“楽聖”として慕われ、多くの楽曲が今も輝きを失わないのは、過酷な運命に立ち向かい、苦難を乗り越えた力強さが人々の心を捉えてやまないからだろう。

 記念すべき年を祝う演奏会やイベントが世界各地で予定され、大いに盛り上がるはずだったが、新型コロナウイルスの直撃を受けた。鹿児島でも年末の風物詩「かごしま県民第九」が中止に追い込まれた。

 ベートーベンの生まれた日は、師走の16日もしくは17日とされる。新型ウイルスへの不安にさいなまれる日が続くこんな時こそ、不滅の名曲に耳を傾け、不屈の生涯に思いをはせたい。