( 12/26 付 )

 最近、ふと気づくと口ずさんでいる。「あれは三年前 止めるアナタ駅に残し」。1972年の日本レコード大賞に輝いた「喝采」である。

 この歌が入った昭和歌謡のカバーアルバムを聴くせいだ。ロックバンド「エレファントカシマシ」のボーカル宮本浩次さんが、新型コロナの自粛下で制作し、11月発売した。幼い頃から親しんだヒット曲への愛が感じられる。

 「喝采」の作曲を手掛けた中村泰士さんが亡くなった。きのうの朝刊で訃報を読み始めた頃、今度は同世代の作詞家なかにし礼さんの死去を知った。81歳と82歳。昭和の歌謡曲黄金期を支えた2人だった。

 コンビで世に出した「北酒場」は、82年のレコード大賞を受賞した。振り返れば2月に東京のホテルニュージャパン火災が起き、11月には第1次中曽根康弘内閣が成立した年だ。当時新登場の映像カラオケで「からめた指が」のサビをうなった向きも多かろう。

 終戦後、旧満州から引き揚げてきたなかにしさんは「昭和に対する愛と感謝と憎しみと恨み」を恋歌に託した、とエッセーに書いている。何千という作品群は、昭和へのラブレターだった。

 「石狩挽歌」「心のこり」「今日でお別れ」…。一つの時代を彩った歌は、カバー集のように時を超えてリレーされる。友人とカラオケに繰り出せる日はまだ遠い。希代の音楽職人たちの歌をきょうもまた一人口ずさむ。