( 12/28 付 )

 新鮮なブリを頂いた。「嫁ブリのお裾分け」と添え書きがある。福岡など北部九州では結婚して初めての正月、夫の実家が嫁の実家へブリを贈る風習がある。

 諸説あるが、良縁を喜ぶ「よか嫁さんぶり」の由来が一番しっくりくる。成長につれて名前が変わる出世魚は立身出世を願う縁起物で、福岡のおせち料理に欠かせない食材である。

 本来季節の変わり目に神様へ供える物だったおせちは、いつしか正月の料理に定着した。子孫繁栄を願う数の子や「喜ぶ」に掛けた昆布、腰の曲がった形から長寿を連想させるエビなど庶民のささやかな願いが重箱に詰まっている。

 コロナ禍の年末は、おせちの売れ行きが好調のようだ。近所の仕出屋の主人は「年末年始のGoTo事業停止が決まった直後から予約が増えた」。旅行や帰省を取りやめ、ゆっくり自宅で過ごす「巣ごもり需要」らしい。

 浮いたお金を食費に回す人が多いのか、例年に比べて高額なおせちも売れているという。感染に配慮した「1人1重」タイプはすでに完売し、受け取りも3密を避けて時間を指定するなど、今年ならではのおせち事情がうかがえる。

 家族でおせちを囲む正月の光景は日本の伝統だが、コロナの流行で帰省を諦めた人も多いだろう。初詣や年始回りも、控えるべきかどうか悩ましい。離れた家族の健康を願いつつ、おせちの一品一品を味わうとするか。