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 頬を刺す風の冷たさも、この日ばかりは身も心もすすがれるようで心地いい。<元日やはげしき風もいさぎよき 日野草城(そうじょう)>。いっそあのウイルスまで清めてくれないか。

 新型コロナ「第3波」のさなか、年が明けた。都会からの帰省を諦めた人や、孫や子に会うのをこらえた人もおられよう。せめて電話で「おめでとう」の言葉を交わし、ぬくもりに触れたい。

 初詣、初商い、お節を囲む食卓…。思えば正月の風景は密である。<日本がここに集る初詣 山口誓子(せいし)>。こんな一斉参拝がはばかられるご時世に、落ち着かない人がいるかもしれない。ならば干支(えと)の丑(うし)にちなんで、牛にまつわる昔話で心を静めてみてはいかがか。

 ある年の暮れ、神様は「新年のあいさつに来た順に1年ずつ大将にしてやる」と動物たちにお触れを出した。歩みの遅い牛は暗いうちから出発したのに、到着寸前で背中に乗っていたネズミに1番をさらわれる。

 それでも牛はネズミをとがめなかった。できるだけの備えをしたのだから、最高の結果でなくてもよしとする-。こう続く物語もある。いつになく先が見通せない今だからこそ、どっしりと構える姿にあやかりたい。

 進学や就職など人生の節目を迎える方も多かろう。<はつゆめのせめては末のよかりけり 久保田万太郎>。牛のように一歩一歩を着実に刻み、いつかたどり着く明るい日を信じよう。