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 中国への返還を3年後に控えた1994年、香港映画のイメージを変えたといわれるしゃれたラブロマンスが製作された。金城武さん、トニー・レオンさんら主演の「恋する惑星」である。

 東洋と西洋の文化が入り交じるきらきらした映像。「どこ行きたい?」「君の好きな所へ」。せりふも格好よくて日本でも人気を呼んだ。知人の女性たちが“聖地巡礼”に旅立ったのを覚えている。

 同年、初めて香港を訪れた南日本写真展審査員の中藤毅彦さんもエネルギー渦巻く街に魅せられた一人だ。一昨年の暮れ、25年ぶりに旅して撮った光景を先日、写真集「HONG KONG 2019」(禅フォトギャラリー)として出版した。

 当時盛んだった民主化デモと、いつも通りの営みを続ける人々との対比が鮮やかである。同時に、その後の国家安全維持法施行と民主活動家に対する弾圧を考えれば、胸を締め付けられるような気持ちになる。

 中藤さんは「日常と非日常が隣り合わせにあることを、写真家として記録したかった」と話す。粒子の粗いモノクロ100点余が放つ熱量は、そんな切実な思いから生まれている。

 新聞創業者が再収監され、若い活動家は重罪者の刑務所に移送と、新年も暗いニュースが相次ぎ報じられた。「君の好きな所へ」行ける自由な香港を取り戻すため、国際社会は何ができるか。鹿児島でも問い続けたい。