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 カーブの手前で手を放すとハンドルがひとりでに動いて曲がっていく。俳優の香川照之さんが、試乗した車に「意思がある」と驚くテレビCMに誇張はあるまい。

 自動運転の規定を初めて盛り込んだ改正道交法が昨年施行され、実用化への動きが加速している。自動ブレーキやさまざまな運転支援装置を搭載した車の発売も相次ぐ。「交通事故ゼロ」に向け、技術の進歩は頼もしい。

 発生件数、死者数ともに減少傾向にある。昨年の全国の死者数は2839人となり、統計がある1948年以降最も少なく初の2000人台だった。鹿児島県も前年より8人少ない53人で、最も多かった72年の5分の1ほどにとどまった。

 「交通戦争」と呼ばれた時代である。70年に全国の死者数が1万6765人に上り、日清戦争で亡くなった人数に迫った。戦争状態と重く受け止めた当時を思えば、隔世の感がある。

 減少した要因の一つに車の性能向上があろう。では、完全自動運転が実現すれば事故を撲滅できるのか。専門家は、物陰から急に歩行者が飛び出した場合など、その場は避けられても回避先に他の危険が潜む可能性があり、ゼロは難しいという。車に頼り切るにはまだ早い。

 死者のうち65歳以上が全国で5割超、県内で7割を占める。高齢化が進む中、弱者保護の立場で人優先の対策が欠かせない。要は一人一人の安全意識にかかっている。