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 両翼を大きく広げ、空を舞う鳳凰(ほうおう)の姿が美しい。力強いタッチで描かれた墨絵だが、よくよく見ると普通の絵ではない。胴体が「夢」の漢字でできている。

 福岡市の専門学校に通う新穂文健(にいぼふみたけ)さんは、書道と墨絵が融合した絵を手掛ける。モチーフの多くは動物で、シルエットの中に文字が溶け込む。修正はできない一発書きというから驚く。半紙に小筆1本で墨の濃淡を操る。

 生命力あふれる動物に思いを込めた文字を託すアイデアは、1年前に思いついた。ワシには「愛」を、虎には「命と魂」を忍ばせるなど、作品は個性的で躍動感がある。

 出水高校を卒業、書道アーティストを目指し昨春福岡へ出てきた。学校に通う傍ら、秋には同市で1日限りの初個展を早速開いた。「挑戦に早すぎることはない」と語る新穂さんは、脳の病気でこれまでに2度の大きな手術を経験した。

 しゃれた長髪は手術跡を隠すためだ。定期的な検査を今も欠かせず、再発への不安は消えない。脇腹への自己注射も毎日の日課である。「思い立った時が好機。だって生きているだけでありがたいから」。

 「感」の文字を抱いた鶴が宙を舞い、見上げる亀の甲羅に「謝」が浮かぶ作品は、お気に入りの一つという。両親や恩師、友人など温かく見守ってくれる人たちの笑顔に背中を押される。3月に予定する2回目の個展に向けて、19歳はきょうも筆を握る。