( 1/12 付 )

 三陸地方に「津波てんでんこ」という言葉がある。津波が来たら、てんでばらばらになって逃げろという意味である。一刻も早く避難し、自分の命は自分で守る-。常襲地帯ならではの厳しい教えだ。

 世界有数の火山地帯である鹿児島にも似たような教訓が伝わる。「住民ハ理論ニ信頼セズ」。鹿児島市の東桜島小学校に立つ「桜島爆発記念碑」に刻まれている。大正大噴火の際、測候所の判断を信じて逃げ遅れた人がいたことから自主避難の大切さを説く。

 「科学不信の碑」とも呼ばれる。噴火の数日前から地震が頻発し、海岸で熱湯が湧き出るなどの異常が見られたが、測候所は「大噴火はない」とした。「異変ヲ認知スル時ハ、未然ニ避難ノ用意尤(もっと)モ肝要」の碑文は災害から身を守る原点だろう。

 大噴火は107年前のきょう起きた。死者・行方不明者は58人に上り、流れ出た大量の溶岩で桜島は大隅半島と陸続きになった。ロシア極東部のカムチャツカ半島でも灰が降ったとされる。

 当時、測候所には地震計が一つしかなかったそうだ。時を経て、世界でもトップクラスの観測体制が敷かれ、精度も飛躍的に向上した。とはいえ、大雨などに比べ、正確に予知するのは今も難しい。

 「理論ニ信頼セズ」の真意は、一人一人が自然を恐れ、日頃から想像力を働かせて備えよという先人の教えだろう。火山と共に生きるすべでもある。