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 福岡市南部の油山自然公園は、市街地を見下ろす憩いの場として市民に親しまれる。枯れ葉が積もり、所々雪が残る冬の山は寂しげだが、この時季だけの楽しみもある。

 さまざまな色や形を見せてくれる樹木の冬芽(とうが)である。休眠芽とも呼ばれ、花や葉となる芽を硬いうろこのような皮で寒さから守っている。俳人の前田普羅(ふらは)<木々冬芽凍のゆるみに濃紫>と濃い紫色の冬芽に春を待ち望む心情を重ねた。

 冬芽のすぐ近くに葉が付いていた跡を示す葉痕がある。拡大鏡を使い目を凝らすと、人間や動物の顔のように見えるから面白い。冬芽が髪や帽子で、葉痕に残る水や養分の通り道の跡が、目や鼻、口に似ている。

 ネムノキはしわだらけのおじいさん、オニグルミはヒツジに見える。低木のアジサイは観察しやすく、背の高い帽子をかぶった白ヒゲの王様だ。時が過ぎるのも忘れ、観察に夢中になる。

 もうすぐ主役となるソメイヨシノはかわいらしい子どもの顔である。長さが1センチにも満たない冬芽の表面は短い毛で覆われ、10枚以上の皮をまとう。サクラは低温に一定期間さらされないと花を咲かせない。今はまだ春に向け、じっと力を蓄えている。

 コロナ禍が続いているが、巣ごもりばかりでは気もめいりがちだ。天気の良い日は、山や公園でちょっとした気分転換はいかがだろう。春を待つ木々がいろいろな表情で迎えてくれる。