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 奄美の郷土料理の代表格と言えば、知名度の高い鶏飯だろう。薩摩藩の役人をもてなした料理は明治維新から150年余りを経て家庭の味に変わり、学校給食ではナンバーワンの人気だ。

 年末年始は本土との文化の違いを特に意識させられる。大みそかにはツワブキやアザミを一緒に煮込んだウヮンフネ(豚骨)を食べる。年が明けると三献(さんごん)である。

 餅や豚肉、野菜などの吸い物2椀(わん)と刺し身の祝い膳で、儀礼食だから観光客はめったに食べられない。龍郷町立の飲食宿泊施設「荒波(あらば)龍美館(りゅうびかん)」は先日、期間限定でウヮンフネとセットで提供した。

 「高齢者や子育て世帯など料理に手間をかけられない人や移住者にも食べてほしい」との思いからだ。島内外から予想以上の客が訪れ、家庭の食材と比べたり、初めての味を楽しんだりしたという。郷土料理への愛着や関心の表れに違いない。

 油ぞうめん、豚足、パパイア漬、マダ汁(イカの墨汁)、やぎ汁…。自然や風土に根ざした料理を挙げれば切りがない。ハンダマ(スイゼンジナ)やターマン(タイモ)など伝統野菜も四季折々に店頭を飾る。

 郷土料理研究家の藤井つゆさんは生前、「奄美の料理は、自然食そのもの」「ほっと人の心をなごませるやさしさ、あたたかさにあふれている」と著書に記した。先人の知恵や工夫を受け継ぐ食文化は素朴な人情も育んできたのかもしれない。