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 家が密集した江戸の町はたびたび大火に見舞われた。そこで江戸中期、庶民を守るために設置されたのが、今の消防団の起源といわれる町火消しである。

 1万人以上の町人がいくつもの組に組織され、お互いの名誉にかけて消火活動を競い合った。逃げ遅れた人を助けに向かう勇敢な姿は名物となり、やがて「火事とけんかは江戸の華」と例えられたという。

 世界のトップアスリートが躍動する五輪は現代の「華」に違いない。しかし、開催まで半年を切った東京大会に暗雲が立ちこめる。長引くコロナ禍で医療環境は切迫した状況が続き、さまざまな臆測が飛び交う。

 中でも英紙タイムズ(電子版)が、東京発の記事で「日本政府が今夏は中止せざるを得ないと内々に結論付けた」と報じ、混乱が広がった。与党幹部の話として伝えられたから、まんざらでもないのか。

 政府や大会組織委員会は報道内容の火消しに躍起になった。菅義偉首相も「人類が新型コロナに打ち勝った証し」として開催する姿勢を崩さない。今月上旬の共同通信社の世論調査で再延期を求める人が44.8%に上ったのも、自国での祭典を待ち望んでいるからだろう。

 ただ、コロナウイルスは枯れ野を走る火のようにまん延する。判断が遅れるようだと今夏の開催はおろか、再延期の道も閉ざされてしまいかねない。国内聖火リレーのスタートは2カ月後に迫る。