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 寡黙な女将(おかみ)が、1人で切り盛りするうどん屋「やお八」が福岡市西新にある。女将は17年前、中国から出稼ぎに来た。日本語学校に通う傍ら、今の店でアルバイトを始め、その後に経営を譲り受けた。

 あまりしゃべらないのは「日本語が上手じゃないから」と言うが、うれしそうに会話を弾ませるのが、近くの大学に通う学生たちが顔を見せた時だ。学校を通じて配ったうどん・そばの無料券を握りしめてやってくる。

 コロナ禍を受け昨年2回、計約300食を用意した。「1日1食でつらい」「食費がない」。商店街の人から1人暮らしの学生の窮状を聞いたのがきっかけだった。中国に残す大学生の一人娘が頭に浮かび、涙が止まらなかったという。

 仕送りが減り、アルバイト先も失った学生たちは、生活を切り詰めるしかない。学業もおろそかにならないか。不安と孤独感を少しでも和らげてあげたいと、カウンター越しに積極的に声を掛ける。

 福岡では緊急事態宣言の時短営業や外出自粛が続き、店の経営だって苦しい。でも、学生たちの「おいしい。ありがとう」と喜ぶ顔に自身も励まされる。寄付の申し出やおつりを受け取らない常連客も出てきた。

 近く次の無料券を配る予定だ。「皆で助け合えば、明るい日は来る。笑顔を忘れないで」。沸き立つ湯気に汗を拭いながら、優しい“母”が作るうどんは心まで温めてくれる。