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 出演者と客席との掛け合いはライブコンサートの魅力の一つだろう。公演で全国を回る歌手がステージから「ただいま」と呼び掛ける場面は、鹿児島のホールでもよく見られる。客席は「お帰り」と応じる。

 その声が事前に練習したようにそろっていて、会場がどっと沸くこともある。よそよそしさが一気に取っ払われ、心地よい一体感が生まれる。普段は何げなく使う言葉のやりとりも、大きな力を秘めている。

 家庭だけでなく地域や職場、学校でも「ただいま」「お帰り」を言い合える空気をつくろうという運動が全国に広がりつつある。愛媛県の有志が発信する「シトラスリボン」プロジェクトである。

 愛媛特産のシトラス、つまりかんきつ類の黄緑色のリボンがシンボルだ。感染拡大が続く新型コロナウイルスへの恐れや不安から、感染者や医療関係者への差別や偏見をあらわにする人が後を絶たない。こんな時こそ思いやりの心を忘れまい、という決意の目印といったところだろう。

 今月初め、国会で菅義偉首相が背広の襟にこのリボンを付け、運動への賛意を示していた。垂水市や枕崎市でも賛同する公共施設職員がリボン着用を始めている。共感する人はさらに増えるかもしれない。

 油断できないウイルスと隣り合わせの日々は続く。さりげない言葉を交わしているうちに、人を疑う気持ちは優しさに変わっていくはずだ。