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 「道徳と経済とは、共に両立して進むべきものでございます」。先日、日本資本主義の父といわれる渋沢栄一が持論の「道徳経済合一説」を講義してくれた。

 といっても、70代の姿を再現したロボットである。生まれ育った埼玉県深谷市にある記念館に昨夏お目見えした。タキシード姿で時折まばたきもする。自説が社会に受け入れられることを期待する、と熱っぽく語った。

 道徳と経済、つまり社会貢献と利益追求の両立を目指す会社は、今では珍しくない。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」にも通じる。だが、金もうけは卑しいことという教えが浸透していた明治ではかなり先を行く考えだったのだろう。

 論語をよりどころとした渋沢の説は色あせず、100年以上前に編まれた講演録「論語と算盤(そろばん)」がベストセラーになっている。3年後には1万円札の顔になるから、今から遺訓に触れて親しみたいとの気持ちが働くのかもしれない。

 尊皇攘夷(じょうい)の志士から幕臣に転じて維新をくぐり抜け、さらには大蔵官僚から実業家に転身した。「西の五代友厚」と並んで「東の渋沢」と呼ばれた生涯は波乱に満ちている。

 渋沢が主人公のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」がスタートした。西郷隆盛ら鹿児島ゆかりの人物との交流がどう描かれるかも楽しみだ。本やドラマから、先が見通せない時代を生き抜くヒントが見つかるといい。