( 2/24 付 )

 わが家の庭の水仙が次々と花を咲かせている。真っすぐに伸びた茎の先に白い花びらを頂き、風に揺れている。冬枯れが久しかった景色がようやく春めいてきた。

 別名を雪中花という。<初雪や水仙のはのたはむまで 芭蕉>。うっすらと積もった雪に葉がわずかにたわんでいる。そんな姿は先週、鹿児島でも見られただろう。今年はいつもより咲き始めが遅かったように感じるが、ここ数日来の陽気で開花を急いだのかもしれない。

 清らかなたたずまいに気高さをも感じさせる花を眺めていたら、26年前の阪神大震災の映像を思い出した。当時の天皇皇后両陛下は震災の2週間後に被災地を訪問された。皇后さまは神戸市長田区でひざまずき、がれきの上に17本の水仙を供えた。

 神戸にたつ朝、皇居の堀のそばに咲いていた水仙を摘んで持ってきたのだという。花束は、火災で焼け落ちた街の風景の中で際立ち、希望の光にも見えた。

 その後、商店街復興のシンボルにもなった花束は今、ドライフラワーに加工され、神戸布引ハーブ園に飾られている(26日まで休園)。どん底からはい上がった記憶をいつまでも呼び起こしてくれるに違いない。

 東日本大震災から来月で10年を迎える東北の地は春まだ遠く、水仙が香気を放つのは、ひと月以上先になるという。復興に役立つことを何かできないか。庭の水仙を見ながら思いを巡らせる。