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 宅配便がまだ普及していないころ、荷物は駅から送ることが多かった。「チッキ便」と呼ばれ、列車に乗らなくても、荷物だけ運んでくれた。改札のそばに窓口があり、布団袋などが積まれた光景をおぼろげに覚えている。

 旅客車の空きスペースを利用したりして荷物を輸送していたそうだ。宅配便や郵便小包に押されて利用者が減少し、1987(昭和62)年の国鉄分割民営化を前に姿を消した。

 かつてのライバルが手を結ぶ。JR九州と佐川急便が九州新幹線で宅配便の荷物を運ぶ実証実験を行った。車内販売を準備するための空きスペースなどを利用するというからチッキ便と同じ発想である。

 空席が目立ち、空気を運んでいるような新幹線に乗り合わせることがある。荷物一つでも収益につなげる知恵と工夫が求められるのだろう。トラック業界にとっても人手不足や長時間労働の改善につながるかもしれない。

 メリットは他にもある。地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量が、鉄道はトラックのわずか11分の1にとどまる。人にも地球にもやさしく、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」とも通じる。

 実証実験ではJAいぶすき管内のソラマメやスナップエンドウが運ばれた。取れたての旬の味覚を各地の食卓へ-。高速鉄道と小回りが自慢の宅配便が手を取れば、たくさんの人を笑顔にしてくれそうだ。