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 淡いピンクの花が時を惜しむように一斉に咲き、一斉に散っていく。ソメイヨシノは日本を代表する桜の一つだ。幾千本が咲きそろう光景は壮観である。

 元々は2種の桜を交配させた品種で、1本の原木から接ぎ木し、明治以降全国に広がったとされる。ほぼ同じ時期に開花し落花するのは、同遺伝子を持つゆえだ。最も身近にある「クローン」と言えよう。

 福岡県大野城市の心のふるさと館で「スーパークローン文化財展」が開かれている。東京芸術大学が手掛ける再現文化財が並ぶ。素材や質感など徹底してオリジナルにこだわり、その緻密さは単なる複製とは一線を画す。

 国宝「法隆寺釈迦三尊像(しゃかさんぞんぞう)」は3D技術で採寸し、鋳造や彫金は匠(たくみ)の技を持つ工芸職人らが担った。欠落した頭部の一部も文献などを参考に復元するなど往時に近い。普段は見られない裏側に回れば、聖徳太子と同じ身長を示す「尺寸王身」の彫り文字が浮かぶ。

 1949年に焼損した「法隆寺金堂壁画」は写真を基によみがえった。細かな凹凸や色彩までそっくりな7面の巨大壁画に圧倒される。周囲に漂う香の匂いや遠くに聞こえる読経も臨場感を醸し出す。

 最近はネットで鑑賞できる文化財も増えたが、やはり間近に見る魅力にはかなわない。新たな芸術の道を切り開くクローン文化財は、いつしかソメイヨシノのように親しまれる宝になるかもしれない。