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 街角に置かれたピアノを通りがかりの人がおもむろに弾き始める。音色に誘われて人だかりができ、笑顔の輪が広がる。そんな動画が投稿サイトで人気を集めている。

 ストリートピアノと呼ばれ、日本で初めてお目見えしたのは鹿児島中央駅東口の一番街商店街とされる。九州新幹線全線開業を間近に控えた2011年2月末、駅前を盛り上げようと、地域おこしグループが贈った。

 旗振り役は、商店街の催しで付き合いのあった霧島市の茶業者・大坪徹さんである。欧米で盛んなことを知り、譲ってもらえるピアノを求めて奔走した。デザイン専門学校生の手でカラフルな彩色が施され、開業を待ち構えた。

 ところが、本番前日に東日本大震災が発生し祝賀ムードは吹き飛ぶ。その後は被災地に義援金を募ったり、ピアノを贈ったりと活動の幅を広げた。16年に61歳で急逝するまで、先頭で引っ張った実行力とアイデアに頭が下がる。

 活動は息子の元気さんが引き継いだ。あの日は父の手伝いで一番街にいた。津波のニュース映像に何かできないかともどかしかったことを忘れない。とりわけ、翌年始めた「ストリートピアノでつなぐ祈りのハーモニー」に熱が入る。各地で一斉に行う演奏会である。

 10回目の今年はきょう午後2時半から一番街など県内外13会場で開く。ピアノの旋律に乗せて笑顔と復興の願いが被災地に届けられる。