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 引っ越しを機に思い切って不用な衣類の処分を始めた。ごみとリサイクル用に仕分けている最中、はたと手が止まった。子どもが3年間お世話になった学生服である。

 桜舞い散る中学の入学式で不格好だった長い袖は、卒業式ではずいぶん短く見えた。登下校や授業参観の様子などが次々と脳裏に浮かぶ。宝ともいえる思い出が詰まり、やはり手放しづらい。

 ためらう背中を押してくれるのが学生服のリユース(再利用)事業だ。鹿児島市の東大介さんが2年前開いた専門店「NAZUNA(なづな)」もその一つ。不用になった制服を買い取りや寄付で集めて安価で販売している。入荷待ちの予約は今も180件近い。

 新品なら数万円する制服も珍しくない。子育て世帯には大きな負担だろう。店内にはクリーニングやネーム消しを施した約6000点が次の持ち主を待つ。上履きや文房具などを無償でもらえるコーナーもうれしい気配りだ。

 「あすは入学式なのに制服を買ってあげられない」。時折寄せられる切実な貧困の実態に、東さんの胸は詰まる。悲しんでいた親たちが笑顔で店を出る姿が次への活力となる。事業へ理解が広まり寄付が増えてきたのも心強い。

 卒業の季節がやってきた。制服を手元に置いておくのもよし。タンスに眠らせておくだけなら、必要とする子どもたちの新たな思い出づくりに役立てるのもよし、である。