( 3/20 付 )

 薩摩川内市の市街地が広がる平野の真ん中に、こんもりと小高い山がある。神亀山(しんきさん)といい、航空写真で見れば、なるほど亀の形に似ている。名前を付けた昔の人はそこまで知っていたのだろうか。

 標高70メートルの山上には、ニニギノミコトを祭る新田神社と可愛山陵がある。二の鳥居から社殿まで322段の石段が緑の中に連なる様は趣深い。ここ半年、運動不足の解消を兼ねて週末ごとに通い、息を切らしながら上っては手を合わせている。

 植生が豊かで、散歩で訪れる人も多い市民のオアシスだ。先週は早くも新緑を目にした。石段沿いに立ち並ぶ晩秋の紅葉に感激したのが、つい先日のことのようである。「1月は行く。2月は逃げる。3月は去る」。足早に過ぎる時の流れに感じ入る。

 石段を降りて太鼓橋を渡ると、川内川に向かって参道が延びる。桜の名所として知られ、こちらも見頃になってきた。ただ新型コロナウイルス感染防止で、恒例だった夜桜提灯(ぢょうちん)は飾られず、桜まつりも開かれない。

 各地の折々の行事は来月以降も、中止や縮小開催が多いようである。春夏秋冬、自然はいつもの表情を見せてくれるのに、人間の営みはコロナに翻弄(ほんろう)され続けている。

 天気がいい日にはお参りして、わが家とこの世の平穏無事、そして、かつての日常が早く戻ってくることを祈りたい。そして参道を歩いて、春の息吹に触れるとしよう。