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 「山路(やまみち)を登りながら、こう考えた」。先へ先へと行く道すがら、夏目漱石の「草枕」の書き出しが頭に浮かんだ。「時々蒲公英(たんぽぽ)を踏みつける」という描写もある。眼前の霧島路と重なった。

 霧島市観光協会が主催する旅をした。20年以上続いた龍馬ハネムーンウオークを衣替えした新たな試み。3月中ならいつでもそれぞれの都合で参加できる。最少催行人員1人の気ままな道行きである。

 案内役は、龍馬夫妻が歩いたという約45キロの「ハネムーンロード」に並ぶ48基の道標だ。従来のウオークは、道標に関係なく4コースに分かれていた。今回は隼人港の道標一から霧島神宮近くの道標四十八まで、忠実にたどることを提案する。

 時季もいい。春の柔らかい日差しが土にしみこんで、足元から伝わってくる。道標の数字を追って黙々と右に左に折れていけば、交通量の多い国道をそれて裏道に誘い込まれる。用水路や川が脇を伴走し、視線を上げるたび韓国岳や高千穂峰が近づく。

 この道標、鹿児島県が設置したらしい。中には文字が薄れたものもあり、かなり年季が入っている。新型コロナ下で「埋もれていた素材をしっかり生かそう」と考えた霧島市観光協会が、改めて光を当てた。

 道なりに進むうち「右は雑木山、左は菜の花の見つづけである」と、「草枕」にあるような場所にも出くわす。歩き始める前に一読をお勧めしたい。