( 3/29 付 )

 春の訪れを告げる奄美近海での初ガツオ漁がシーズンを迎えている。奄美市名瀬郊外の大熊(だいくま)漁港には連日、水揚げを知らせる「カツオのぼり」がはためく。

 大熊を拠点とする唯一のカツオ船「宝勢丸」は夜明け前に出港し、一本釣り漁を終え、昼ごろには帰ってくる。近所の人たちは、のぼりを見て、港で販売される新鮮な刺し身を買い求めるのだ。

 回遊魚のカツオは熱帯から亜熱帯で育ち、成長に伴い黒潮に乗って北上する。奄美近海には2月中旬ごろから現れ、秋の南下も合わせると年間2500キロ以上回遊するという。

 漁場の中心は、沖合に浮かべた人工漁礁だ。回遊魚が流木に集まる習性を利用し、船はそこを巡る。生き餌のイワシをまき、さらに散水するとカツオは獲物の大群と錯覚し、釣り針に猛然と食いつく。漁師は「魚が湧く」と表現する。想像するだけで、圧巻の光景が広がる。

 宝勢丸鰹漁業生産組合の徳田謙治さんによると、今年は体長60センチ、重さ5キロ前後が多く、型がいいらしい。厳選したものだけさばく刺し身はぷりぷりして、魚好きにとってこれ以上のぜいたくはない。

 大熊のカツオ漁は来年120年を迎える。魚食離れが進む中、組合は「島の魚を味わってほしい」といけすでの釣り体験や運営する食堂のオリジナルメニュー開発に取り組む。こうした積み重ねが伝統のカツオ漁の継承にもつながるといい。