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 10年余り前、神奈川にある洋画家で南日本女流美術展審査員の遠藤彰子さんのアトリエを訪ねた時の驚きが忘れられない。制作中の1000号(3.3×5メートル)の絵は、「巨大画」の言葉がぴったりの迫力だった。

 そんな他に類を見ない大作がこの春、鹿児島市立美術館に集まった。「魂の旅」と題した九州初の個展である。最大1500号(3.3×7.5メートル)の絵画群は、鑑賞というより体感するとの表現が似合う。

 コロナ禍で開催が1年延期となった間に取り組んだ1000号の新作「雪・星ふりしきる」をはじめテーマの壮大さにも圧倒される。人間が生きることの意味を丸ごと捉えたい、との作家の強い思いが伝わってくる。

 一つの作品に多角的な視点を取り入れ、時間と空間が自由に展開する。そこに、自然や時代に翻弄(ほんろう)される人々の苦しみと喜びを細やかに描写していく。「幻想的」「叙事詩のよう」と評されるゆえんである。

 幼い頃は毎日夕暮れまでアスファルトに蝋石(ろうせき)で物語を描き「変な子だね」と両親に笑われた。小学校の絵から「楽園」「街」と精神世界の変遷をたどるシリーズが連なる会場には、奄美に取材した2点も並ぶ。

 いま73歳。「80歳、90歳まで生きたら、どんな感覚になっているのか楽しみ」。まだ旅の途上。巨大画の世界を一人で切り開いた遠藤さんに、励まされるような気持ちになる展覧会だ。5月5日まで。