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 穏やかな風が吹くのどかな春の日を満喫したいなら、お薦めの場所がある。肝付町の岸良海岸だ。大隅半島南東部の国見山系に囲まれた浦にあり、訪れる人は多くない。

 独特の赤みを帯びた砂浜に腰を下ろせば、ゆったりとうねる群青色の太平洋が目の前に広がる。<春の海ひねもすのたりのたりかな>(与謝蕪村)の句など思い浮かべながら、海岸を独り占めするぜいたくを味わえる。

 だが、人の少なさをありがたがるのは、よそ者の身勝手というものだろう。昭和30年代に2000人を超えていた岸良地区の人口は約570人になり、過疎高齢化の波に洗われている。このままでは小中学校の存続も危うい。そこで地元が選択したのが義務教育学校への移行である。

 施設一体型の一貫校だった岸良小中学校が今春、「岸良学園」に生まれ変わる。教職員の配置数など制度面での利点が期待できるという。児童生徒16人、教職員11人、複式3学級でスタートを切る。

 場所や校舎は変わらないし、1、2年生はゼロで将来の見通しが明るく開けたわけでもない。それでも、町議会に新設を求める嘆願書を出すなど奔走した住民の希望はつながった。教育環境を理由に転出する家族を出したくないとの思いは切実だ。

 10日の開校式には校区住民も集まって、一新された校章や校歌が披露される。学園の第一歩がうららかな春光に包まれればいい。