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 激しく言い争う夫婦に6歳の息子が「カテイノジジョウはやめろ!」と叫ぶ。島尾敏雄の私小説「死の棘(とげ)」の一場面である。大人の口ぶりをまねたのだろうか。親の都合で振り回される幼子が痛々しい。

 夫婦の不仲や貧困など家庭内の問題は他人に知られたくない。それ故、外からうかがい知るのは難しい。ただ、そんな環境を引き受けて暮らさざるを得ない子どもがいる。「家庭の事情」と見過ごすことはできない。

 「ヤングケアラー」という言葉を耳にするようになった。家族の介護や世話を担う18歳未満の子どもたちだ。国の調査で中学校に5.7%、高校に4.1%いることが分かった。クラスに1~2人いる計算で決して少なくない。

 きょうだいの面倒を見る子が最も多く、父母や祖父母を介護するケースもある。半数近くがほぼ毎日、費やす時間は平均で1日4時間前後というから、手伝いの域を超えている。「授業に集中できない」といった悩みは深刻だ。

 それなのに、暗い話をすると空気が悪くなるから友だちには相談しにくいという声がある。学校もプライバシーにどこまで踏み込んでいいか迷うという。問題が表に出にくいゆえんである。

 背景に家族が支えて当然という考えもあるのではないか。悩みを察する周囲の想像力や話を聴く姿勢も試されよう。わがままが許される子ども時代。自助だけでは浮かばれない。