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 雄大な自然に包まれた北海道は温暖な地で暮らす者にとって憧れである。鹿児島市の山形屋で2年ぶりとなる「初夏の北海道物産展」が、あすから始まる。昨年はコロナ禍で中止され、待ちかねていたファンも多いだろう。

 30年ほど前に道内をバイクで巡ったことがある。目的地の一つはテレビドラマ「北の国から」の舞台となった富良野市だった。息子役の純を演じた俳優の吉岡秀隆さんと同世代のため、もがきながら成長する姿に共感を覚えた。

 父親役としてぼくとつな語り口で存在感を見せたのが、3月末に88歳で死去した田中邦衛さんだった。不器用ながらも純と娘の蛍に深い愛情を注ぐ好演は忘れられない。

 富良野市は追悼メッセージを発表し「大自然の中で家族と共に強く生きる姿、本当の豊かさとは何かを黒板五郎という役を通して教えていただいた」と功績をたたえた。

 かつて田中さんは鹿児島市で父親像を語ったことがある。「大きな存在には違いないが、父と子の関係は、父が言葉や行動で子供に何かを教えてやるというような偉いもんじゃない気がする」。

 ドラマでは一家を守る五郎の背中に頼りがいやたくましさを感じた。厳しい自然の中で培われたそんな人間性も北海道の魅力だろうか。今は道内観光も控えざるを得ないが、物産展で北の大地が育んだ海や山の恵みを楽しみ、いつか訪れる日を待つとしよう。