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 作家の城山三郎さんは、なるほどと膝を打った。ある銀行の会長は週1回、東京と大阪を新幹線で行き来する。片道約3時間の車中で、どう過ごしているのか尋ねたときだ。

 最初の1時間は読書、次の1時間は仮眠、そして残り1時間はぼんやり車窓からの風景を眺めているという。移動時間を3等分する工夫は「吸収と休養と思索の時間が快く調和し、生活のリズムを整えている」と随筆に書く。

 似たような話を先日聞いた。25歳までは自分のために勉強し、友だちの輪を広げる。50歳までは家族のために働き、その後は社会に貢献する。人生の旅路も3等分してみれば、一つの道しるべになるかもしれない。

 定年後の生き方を指南する「定年本」が続々と刊行されているそうだ。バブル期に大量採用された世代が50代になり、サラリーマン生活のゴールが見えてきた。とはいえ、人生100年時代に定年は通過点にすぎない。

 自由気ままに暮らしたい。培ってきた知識や技能をボランティア活動に生かすのもいい。しかし子どもは独り立ちしていない。老後資金2000万円問題も頭をよぎる。本にヒントを求める人は少なくないのだろう。

 定年後も60代、70代、80代と3等分してはどうか。城山さんは「随所に主となる」という禅の言葉を引く。要はどんな場面でも情報に振り回されず、主体的に自分の時間や人生を考えることである。