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 古代オリンピック発祥の地ギリシャ・オリンピアの迎賓館には神聖な火が絶えず、神にささげる生けにえを焼く炎も採られたという(村川堅太郎「オリンピア」)。祭典にともる聖火には幸福や繁栄への祈りが込められていた。

 先月25日、福島県を出発した聖火リレーがいよいよきょうから2日間、鹿児島県内を巡回する。県内在住やゆかりのランナー192人がトーチを手に13市1町を走る。

 57年前の東京五輪は県庁出発後、薩摩半島の国道3号を北上し、通る自治体は限られた。今回は市街地が中心だが、佐多岬展望台や曽木の滝公園など観光地も巡る。県内の豊かな自然を発信する機会になるだろう。

 奄美市も初めて聖火を迎える。本土側のリレー終了と同時にスタートする。病を克服した教員、災害復旧に携わった建設業者、部活動に励む中学生-。群島民ら18人があらかじめ運ばれてきた火を掲げ2.9キロをつなぐ。

 1番手の中学2年、田畑昂樹さんは4年前、大阪から親の故郷の奄美市に移住した。「森や海など世界自然遺産候補地の魅力を伝えたい」。ペットボトルをトーチ代わりに練習し本番に臨む。

 3度目の緊急事態宣言が発令され、五輪開催を疑問視する声も少なくない。そんな中、ランナーはさまざまな思いを炎に託していることだろう。節度ある応援と大会組織委員会などによる万全の感染対策で後押ししたい。