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 大衆娯楽の寄席は社会生活維持に必要だ-。こんなたんかを切って東京の演芸場4軒が新型コロナの緊急事態宣言後も営業を続けた。訪れた客の大半は決断を意気に感じたファンだろう。

 都の無観客要請に「社会生活の維持に必要なものを除く」とあったのを、落語協会などが逆手に取った。だが、大臣会見でも再考を求められ、1週間持たずに休業した。

 落ちはさえなかったが、営業の自由を巡る議論に一石を投じたのは間違いない。そもそも客を定員の半数以下とし、換気も徹底した寄席にどれほど感染リスクがあるのだろうか。

 変異株の感染力を考えれば、どんな業種でも休業や無観客を選ぶ方が安全なのは分かる。ただ、コロナ禍の1年余りを振り返ると、映画の公開が延期されたり、コンサートや舞台が中止に追い込まれたりした。文化芸術活動に携わる人たちの打撃は大きい。

 休業を求める施設規模の線引きや補償・協力金は適切なのか。飲食店に休業や営業短縮の要請が繰り返され、国民も旅行や移動の自粛を求められてきた。自由と権利の制限が人々の心にダメージを与えている面もあるだろう。

 「国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」。憲法は国民に保障する自由と権利についてこう記す。きょうは憲法記念日。“コロナ慣れ”で身の回りの制限をうのみにしていては社会生活の維持が危うい。