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 相手が出ると、10円玉がことんと落ちる音が公衆電話機の中から聞こえた。かつて、10円玉で通話できる時間は3分。遠距離ならもっと短く、硬貨は次々と落ちていった。それでも数十年前までは生の声を伝える貴重な通信手段だった。

 駅や病院、試験会場で公衆電話の前に並ぶ光景を見ることはほとんどなくなった。先日、鹿児島中央駅近くの電話ボックスをしばらく眺めていたが、その間、一人も使わなかった。公衆電話がスマートフォンなどのモバイル端末に主役の座を奪われて久しい。

 総務省が昨年行った全国アンケートでは、過去1年間使っていないという回答が7割を超えた。鹿児島県内には約2600台あるが、10年前より3割減ったのもうなずける。

 こうした社会環境の変化を受けて、総務省は赤字が続く公衆電話の設置基準を緩和する。現在の10万9000台を4分の1程度に削減する報告書案を取りまとめた。

 一方で災害時の有効な通信手段として東日本大震災以降、その役割は再評価されている。電話が混み合っても優先的につながったり、停電時も電話をかけたりできるからだ。削減が進んで、緊急時に困らないか気になる。

 街角から姿を消していった公衆電話を使ったことがない子供は少なくないと聞く。設置してある場所や使い方を知っておくことも大切だろう。万一の際、10円玉一つで元気な声を伝えられる。