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 持ちつ持たれつという言葉が、この人の頭に浮かんだのか。新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、大手薬局チェーンの会長夫婦の予約を優先的に確保していた愛知県西尾市の副市長である。

 同社は運動施設を無償で貸与するなど、市と深い関わりがあった。会社側からの度重なる要望を受け、「何らかの形でお返しできないかと思った」という。指摘を受けて予約は取り消したが、露骨な配慮に市民が憤るのは無理もない。

 全国で高齢者向けに接種の予約受け付けが本格的に始まった。鹿児島市でも開始直後から問い合わせが殺到し、一部で混乱もあった。中には100回以上電話してもつながらず、直接市役所を訪れた80代女性もいた。「命に関わること」との思いは切実だ。

 ワクチン接種が進む欧米では、一部でマスクなしの外出を認めるなど日常が戻りつつある。屋外の飲食店が営業を再開した英国ロンドンで市民が歓喜するニュース映像に効果を思い知らされる。

 翻ってわが日本、100人当たりの接種回数が先進国の中で最下位レベルと出遅れが著しい。菅義偉首相は1日100万回接種で7月中に高齢者を終えたいと急がせるが、医療従事者の確保など態勢は心もとない。

 ワクチンは十分に行き渡るのか。高止まりする感染者数を見るにつけ気がせく。ここは感染予防を心掛け、腰を据えて順番を待つしかなさそうだ。