( 5/14 付 )

 庭のヤマボウシに昨春、巣箱を掛けた。入居がなくてがっかりしていたが、この1年の雨風でいい具合に色あせ、よそよそしさが消えたのか。今春、晴れて成約がかなった▼初めてのお客さまはシジュウカラだ。せっせと巣の材料を運び入れ、雌が抱卵を始めると雄が通って来る。家族が面白がって近くにセンサーカメラを据えた。丸窓からちょこんと顔を出す雌に、雄が口移しで食事をさせる様子が映っていた。つい頬がゆるむ▼ひながかえった気配がしたのは5連休の最終日だ。見守っていると、虫をくわえた親鳥が枝に止まった。まるで「ご飯だよ」の合図のようにチチチと鳴いて中へ。子どもたちが一斉に喉を震わせた▼愛鳥週間のさなかである。囀(さえず)ってをり飛んでをり追うてをり 三村純也>。繁殖行動をはじめ、体の内から湧いてくる力がうれしくてうれしくて、と言わんばかりの姿が薫風に映える▼人は野鳥に心を寄せてきた。その声を意味ある文句に置き換える「聞きなし」もその表れ。コジュケイはチョットコイで知られるが、80歳を超える知人はいつも空腹だった少年の頃、「ちっと(少し)食え」とたしなめられているように聞こえたらしい▼シジュウカラの巣立ちは近い。<囀をこぼさじと抱く大樹かな 星野立子>。ヤマボウシの緑が日々濃くなる。小さな庭に立つと生きよ生きよ、と無数の声が聞こえる。