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 ザトウクジラと初めて遭遇した。この春、太平洋に面した奄美空港の送迎デッキにいたら霧のような潮吹きが上がった。こぶのような背びれが続き、ゆっくり海中に消えた。

 奄美大島近海には、12月から4月ごろまで姿を見せる。島伝いに回遊するので陸上からの観察スポットも少なくない。聞いてはいたが、思いのほか近くに現れたので驚いた。

 体長約15メートル、体重数十トンにもなる。夏場はロシア海域などで過ごし、冬は繁殖や子育てのため、水温の高い奄美や沖縄近海へ南下する。奄美クジラ・イルカ協会の調査では今年は3月までの4カ月間に延べ1080頭が確認され、最多を更新した。

 商業捕鯨が長く禁止されて頭数が増えたのに伴い、繁殖海域が奄美にまで広がったとみられている。観察できるチャンスが増え、協会に加盟する事業者が2013年から目視調査を兼ねて実施しているウオッチングツアーの人気も高い。

 新型コロナウイルスの影響で今季の参加者は減ったが、それでも水中で見られる「スイム」を含め約3000人が楽しんだ。関東や関西の都市部からが多く、リピーターも増えているという。自然と触れる機会の少ない「都会っ子」の心を揺さぶるだろう。

 島では黒潮に乗って運ばれる海藻や流木をユリムン(寄り物)と呼び、大切にしてきた。巨大なユリムンを観光だけでなく生態や海への理解にも役立てたい。