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 お釈迦(しゃか)様はインドの雨期の3カ月間、弟子たちを1カ所に集めて外出を禁じ、修行に専念させた。「安居(あんご)」と呼ばれ、今でもこの季節、僧侶が院内にこもって座禅や仏典の研究に没頭するしきたりを守る寺がある。

 そもそも足元の悪い雨天時は屋外での托鉢(たくはつ)や布教に向かない。川の氾濫に巻き込まれる心配もある。ならば屋内ですべきことに集中した方がいい。お釈迦様の合理的な判断があったのだろう。

 日本や中国では古来、田植え月の陰暦5月は「物忌みの月」とされた。田の神様に敬意を表すため、人々は身を清めなければならず、男女は逢瀬(おうせ)を慎む習わしがあったという。

 <花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに 小野小町>。桜の花びらは色あせてしまい、月日がむなしく過ぎていく。長雨の空を眺めていたら、思いを寄せる人に会えないやるせなさが募ったのだろうか。

 今年の九州南部は長梅雨になりそうだ。鹿児島地方気象台の予想する梅雨明けは、平年並みの7月15日ごろで、2カ月余り続くことになる。すでに随分降った気がするが、まだ3分の1も経過していない。災害にはまだまだ警戒が欠かせない。

 コロナ禍も重なって、外出して気晴らしするタイミングが難しい。だからといって無為に過ごすのはもったいない。先人に倣って何かに一心に打ち込めば、雨音も優しいBGMになる。