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 雄大に噴煙を上げる姿が観光客には魅力の桜島でも、火砕流と聞けば不安に駆られるのだろう。4月に気象台が発生情報を流すと、宿泊施設に予約客から「行っても大丈夫か」といった問い合わせが相次いだ。

 火砕流は高温の火山灰や軽石、ガスが混ざり合って火口から一気になだれ落ちる。その日のうちに誤認だと分かったが、火山災害の中でも際立って恐ろしい現象との受け止めがすっかり定着した感がある。

 1991年6月3日、長崎県の雲仙・普賢岳で起きた火砕流に報道関係者や消防団員ら43人が巻き込まれて亡くなった。巨大な灰色のかたまりがもくもくと新緑の尾根を乗り越え、人里に迫るニュース映像は何とも不気味だった。

 直後の本紙は「聞き慣れぬ言葉だが、恐ろしさをまざまざと見せつけた」と衝撃を伝えている。当時はまだ専門家でもなければ、その猛威は知られていないのが実態だった。それから30年、多くの犠牲を無駄にしてはなるまい。

 ジャーナリストの江川紹子さんは著書「大火砕流に消ゆ」で小さな思い違いが重なり惨事を招いたと指摘する。学者はパニックを恐れて危険の大きさを伝えるのをためらい、知識のない記者や市民は火山を甘く見ていたという。

 九死に一生を得た元カメラマンは「自然の力は人間の想定を軽く超えてしまった」と顧みる。活火山と共に生きているからこそ肝に銘じたい。