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 杉苗の生産者を、霧島市福山に訪ねた。名刺に「山行苗(やまゆきなえ)生産販売」とある。伐採跡地に植える林業用の苗木を山行苗と呼ぶのだと知った。

 40~50年先に切り出す木に思いをはせて苗木を育てる息の長い仕事は、曽祖父の代から引き継ぐ。土地ごとに環境に合った品種があるため、県境を越える商いには制限が掛かる。宮崎に販売する際は「輸出証明」が要るそうだ。

 最近の木材急騰には戸惑う様子を見せる。「伐採業者が『今だ』とばかりに高性能機械を入れてどんどん切る。植えるのは手だから絶対追いつかない」。現状でさえ、人工林伐採後に植林する鹿児島県内の再造林率は4割どまり。伐採とのアンバランスが心配される。

 価格の高騰は、オイルショックならぬウッドショックと呼ばれる。新型コロナウイルス下で米中での需要が高まり、世界の木材を買い集めている。国産材の流通価格はそのあおりを受け、県内の杉相場は4~6月の3カ月で6割も跳ね上がった。

 チップ材を使う木質バイオマス発電にも影響が出ている。このバブル、もうしばらく尾を引きそうで、戸建て住宅や家具の値上がりにつながらないか気掛かりだ。

 「木を切って終わりじゃない。切ったら、次の林業が始まってしまうことを忘れていないか」。山行苗のハウスで聞いた言葉がよみがえる。きょうのもうけと引き換えに、どんな山が未来に残るのか。