( 7/11 付 )

 朝刊の編集作業が終わり、輪転機が回り始めた時間だったと記憶している。鳴った電話を取った担当デスクが大声を出した。「出水で土石流が起きた」。

 24年前、21人の尊い命を奪った針原地区の豪雨災害である。現場に足を運び、大きくえぐられた山肌や流された家屋にがく然とした。大切な家族を失った方々に接し、土石流の恐ろしさを見せつけられた経験は思い出すのもつらい。

 くしくも同じ7月10日のきのう、北薩地方が豪雨に見舞われた。おとといから断続的に降り続いた雨は未明に激しくなった。暗闇に光る稲光と、とどろく雷の音に、よく眠れなかった方も多かったのではなかろうか。

 大雨が降った地域では、気象庁が情報の発表を始めたばかりの線状降水帯が発生し、西から東に雨雲が次々と流れ込んだ。昨年の熊本県球磨地区も同じ現象が大災害につながった。知ってはいてもあらがえない状況に自然の力を再認識する。

 緊急安全確保の避難情報が出た薩摩川内市にはきのう、ベネズエラの男子バレーボール五輪代表が事前キャンプ入りした。練習する予定の会場は避難所になり、本番を控える選手への影響も心配だ。

 針原の土石流は、大雨が過ぎ去った後に突然起きた。熱海も雨のピークは過ぎていた。天気予報の雨雲を見て「去ったからもう安心」と思うのは早計だ。毎年のことだが、油断禁物の梅雨末期である。