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 <良(よ)か匂(かざ)い鼻も喜(よろ)くだけせん団子(だご)>(春成万の瀬)。だいぶ前の本紙「南日狂壇」に載った秀句である。独特の芳香に顔がほころぶ様子が目に浮かぶ。

 最近はなかなか耳にしなくなったが、「かざ」はにおいや香りを表す。方言だとばかり思っていたら、れっきとした古語で京言葉にもあるらしい。とはいえ、派生した動詞の「かずん(嗅ぐ)」は鹿児島ならではの言い回しに違いない。

 県立博物館で開かれている企画展「くんくんかずんでん~におい図鑑」を訪ねた。身の回りのさまざまなにおいに焦点を当て、その不思議を解説する。自然硫黄の石やヤンバルトサカヤスデ、香草など実物を豊富に展示し、生々しいにおいを体験できる。

 身を守るための命懸けの刺激臭や仲間と情報交換する秘密のフェロモンなど、虫たちの生の営みが垣間見えて興味深い。平川動物公園で集めたふんを嗅ぐと、意外に爽やかなコアラ、ツンと鼻を突くトラ…。少々勇気は要るが違いが分かる。

 いい匂い、悪い臭いは人間の感じ方ひとつである。企画した中峯敦子学芸主事は「生物のにおいは生きている証し。刺激臭のある発酵食品は長期保存するための知恵。そんなにおいの正体や役割を知ってほしい」と狙いを話す。

 新型コロナウイルス対策と消臭のため換気に気を配る。来週から小中学校は夏休み、自由研究の材料探しに鼻を利かせてはいかが。