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 富士山に今月、登山客が戻ってきた。新型コロナの影響で2年ぶりの山開きだから、観光回復への期待は大きかろう。地元では今「登山鉄道構想」が波紋を広げている。

 山梨県側の登山口に通じる25キロほどの有料道路に架線のない次世代型路面電車を走らせる構想である。県の検討会が2月にまとめた。バスやマイカーに代わり、鹿児島市電の低床型のような車両が5合目まで往復する様子を想像するといい。

 背景には2013年の世界文化遺産登録がある。5合目を訪れる客はそれまでの倍以上の年間500万人に達した。いわゆるオーバーツーリズムで、排ガスなど環境負荷の改善は待ったなしだ。

 有識者が東京で議論したため、県内や静岡県側との協議はこれからになる。地元市や観光団体からは「電気バスで十分」と反対の声が上がっている。とんとん拍子には進みそうもない。

 「あくまで、美しい富士山を未来に残すためのたたき台です」。担当者の言葉は控えめだ。確かに運営方法や安全対策といった課題が山積しているとはいえ、絵に描いた餅に終わらせてはもったいない。持続可能な観光を実現するきっかけにしてほしい。

 コロナが収束すれば、世界遺産には再び国内外から客が押し寄せるだろう。近く自然遺産に登録される見通しの奄美・沖縄でも“先輩”の姿を参考にしたい。県境を越えた連携が必要な点も同じだ。