( 7/22 付 )

 向田邦子さんの随筆集「父の詫び状」に母親お手製のアイスクリームの話がある。氷を詰めたおけの中で材料を入れた茶筒を額に汗して回す。できた薄黄色い霜をなめるとまさしくその味がした。

 鹿児島で過ごした小学生の頃。溶ける前になるべく早く食べたい気持ちと、ゆっくり味わいたい気持ちのせめぎ合いにうわずりながら、「早く大人になって一度に二つ食べてみたいと思った」と記す。心躍る夏の思い出に違いない。

 アイスクリームの世帯当たり消費支出が昨年、初めて1万円を超えたという。全国の年平均気温が過去最高を記録する暑さに加え、新型コロナ下の「巣ごもり需要」も高まった。手軽なデザートとして人気を集めたようだ。

 きょうは二十四節気の大暑。一年で最も暑さが厳しくなる時季である。九州南部は最高気温30度を超す真夏日が、まだしばらく続きそうだ。長期予報でも平年より高めと見込まれている。

 最近、熱中症疑いの救急搬送が増えているのが気になる。県内では6月から累計で350人を超え、亡くなった人もいる。マスクが欠かせない日常ではのどの渇きに気付きにくいため、リスクが高まるというから注意したい。

 東京五輪は、あすの開会式を前に競技が始まった。テレビ観戦に熱が入る向きも多かろう。クーラーの効いた部屋でアイスでも頬張りながら応援するのが、この夏はふさわしい。